現在の私のへしこ工房が建つこの場所、以前は茅葺きの船小屋でした。
私がまだ小さかった頃には、茅葺屋根の船小屋がこの村の浜にいくつも並んでいました。
浜で遊ぶ時には絶好の隠れ場所であった船小屋、そこでかくれんぼをしたり、屋根に登ってみたり柱を登って2階にもぐりこんだりして遊んだ記憶が残っていますから現存していたのは40年程前まででしょうか。
ちなみにこの写真は60年ほど前に撮られたものと思われます。
木造船が収納されていて、漁に出るときは浜に丸太をしいて転がし押して出船していきました。
福井県若狭湾沿岸は魚介類が豊富に獲れる地域です。
たくさんの魚が獲れました、特にこの若狭地方の海では鯖が多く獲れたそうです。
この写真は松原の浜で名子の漁師たちが地引網をしている作業のようです。
海からあがる気嵐が、この日の寒さを映しこんでいますね。
日本海に面したこの辺りでは、11月末ごろから海がよく時化るようになり、漁に出られなくなる日が続きます。その為、冬の貴重な保存食として、鯖や鰯が豊富に獲れる時期にそれらを塩漬けにして保存するという習慣が生まれました。
ちょうべいがある「名子」の集落ではこのように半農半漁の暮らしをしていました。
これは耕地整理前の名子のたんぼを映した写真です。
当時、耕運機や田植え機といった電動農機具まどなく全ての作業が人力で、このように農作業に牛が活躍することもありました。ここに映っているのは私の祖父です。
北陸地方の冬は、積雪も多く冬場の食糧確保は大変重要でした。
そのため、へしこなどの保存が効く動物性タンパク質は、長年人々を食糧不足から守ってきた優秀な保存食だったといえますね。
そんな気候風土の若狭でこそ発展したへしこの食文化ですが、へしこ発祥の地とされている福井県は、豊かな漁場を有したコシヒカリ生誕の地でもあります。
へしこの味はぬかで決まるとも言われるほど、漬け込むぬかが重要な味の決め手になります。鯖と良質な米糠、この2つの役者が揃っているのですから、へしこが美味しいのは当たり前ですね。