古くは、鎌倉時代から魚のぬか漬けは作られていたそうです。
福井県のへしこは、江戸時代中頃から盛んに作られるようになったと言われています。
福井県若狭湾沿岸は魚介類が豊富に獲れる地域です。
日本海に面したこの辺りでは、11月末ごろから海がよく時化るようになり、漁に出られなくなる日が続きます。その為、冬の貴重な保存食として、鯖や鰯が豊富に獲れる時期にそれらを塩漬けにして保存するという習慣が生まれました。
北陸地方の冬は、積雪も多く冬場の食糧確保は大変重要でした。
そのため、へしこなどの保存が効く動物性タンパク質は、長年人々を食糧不足から守ってきた優秀な保存食だったといえます。
また、鯖が豊富に獲れるこの地域から、保存性を高めた状態の鯖を京都に献上するという役割も担っていたそうです。俗にいう『鯖街道』がその献上ルートですね。
若狭から京都へ至る多数の街道や峠道には、本来それぞれ固有の呼び名がありますが、近年、運ばれた物資の中で「鯖」が特に注目され有名になったことから、これらの道を総称して「鯖街道」と呼ぶようになりました。
その内、最も盛んに利用された道は、小浜から熊川を経由して滋賀県の朽木を通り、京都の出町柳に至る「若狭街道」です。
(醸しにすと女将が語るへしこものがたり)
生鯖に塩をして街道を抜け、京都に着くころには良い塩加減になっていたといいます。
当時はもちろん人力で運搬していたので、日持ちがするへしこは京都に到着した時点でも、腐ることなくむしろ旨味が増した大変美味しい鯖となっていたことが想像できますね。
「京は遠ても十八里」という言葉があるように、若狭と京都は遠いようで近い、そんな位置関係でした。